パラリンピック、日本と諸外国のメディアの差 「日本は”多様性”と縁遠い」と元選手指摘

9月18日、リオパラリンピックが全日程を終え、いよいよ次は2020年の東京大会に向けて動き始める。今回日本は初めて金メダルを一つも取れないとの結果となったが、東京大会に向けてどのような準備を選手のみならず国や自治体、企業などはしていけばいいのか。北京大会で2つの金メダル、ロンドン大会で銀メダルを獲得した元車いす陸上選手の伊藤智也氏が19日に放送されたAbemaTVの報道番組『AbemaPrime』にSkypeで登場し、必要なことを語った。



伊藤氏が金メダルを取れた理由は意外にも、企業のサポートをあまり受けなかったことだという。その真意をこう語る。

「絶対に勝たなくてはならないという宿命がなかったんですよ(プレッシャーが少なかった)。企業がつけばお金は潤うかもしれないですが、そもそもどういう作戦で戦うかということが重要なんです。『戦うためのトレーニング』と『勝つためのトレーニング』ってのがありますが、これらは別モノです。『勝つため』は基礎である『戦うため』の上の概念です。必要なものはお金だけでなく設備だったり指導者の力量ですね。日本はまだ障害者スポーツの歴史が浅い。特に陸上でいえば、まだOBが出ていない状況です。年齢的にはOBと言われる人が現役で走っている。コーチ不足が否めない状況にあります」

つまり、企業が入り遠征費の補助をしたり、栄養面でサポートするといった段階以前の状況にあるため、「勝つためのトレーニング」はまだ早いということだ。



この日出演した8bitnews主宰の堀潤氏はリオに取材のために行ってきた経験を踏まえ、日本国内での報道が少ないのではという指摘をした。これに対して、伊藤氏は、イギリスでは障害者に特化したテレビのチャンネルがあるとし、番組作りもバラエティに富んでいると説明。ちなみにイギリスは今大会のメダル獲得数は中国に次ぐ2位である。

「彼らは『障害者だから……』という固定観念で決して情報を発信していません。多様性があるのですが、やっぱり(障害者に固定のイメージをつけがちな)日本人にとって『多様性』は非常に縁遠い言葉かもしれません。そういったところを基礎の部分からきちんと変えていかなくては丁寧な議論にならないのですよ。乱暴な議論の上には素晴らしいものができません」

このように、日本社会の障害者に対する意識を変えていくことがまずは必要だと説明する。「基礎」が重要だという考え方だ。そして、今回日本は金メダルを一つも獲得できなかったが、この理由について伊藤氏は「やっぱり世界の進歩ってのが圧倒的だったんです。日本人が伸びてないのではなく、日本人の伸びしろより世界の伸びしろがすごかったということです」と語った。



一方で同番組のスタジオゲストとして登場した東京車いすバスケットボール連盟会長・玉川敏彦氏は、NHKが今回パラリンピックを多く取り上げたことについては「一歩前進」とコメントした。そして、番組コメンテーターの博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー・原田曜平氏は、陸上競技において日本の美人選手が頻繁に紹介されたことについては、賛否両論はあれど「これも始まりかもしれない」と同様に評価した。

玉川氏は「進化」の別の実例として、かつて車いすバスケットボールの日本選手権は、リハビリの一環として見られていたが、実際に試合を観戦した人々からすれば「これはスポーツだ」と認識するようになったことを挙げた。そういった人々が増えている状況を感じている。さらには、健常者の大学生が車いすに乗るスポーツを楽しんでいるため、そういう人を取り込んでいきたいと考えているようだ。


ドイツでは車いすバスケットボールが興行として成り立っており、オーストラリアでは「バスケットボール」という一つの枠組みの中に「車いすバスケットボール」がある。日本におけるパラリンピックの発展のためには諸外国が抱く意識や実践する取り組みも参考になることだろう。


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