暴力・復讐・激痛・残酷!パク・チャヌク監督“復讐三部作”を振り返る

パク・チャヌク監督によるバイオレンス・アクション・サスペンス映画の金字塔『オールド・ボーイ』が、AbemaTVにて放送される。

韓国出身の映画監督パク・チャヌクは、1963年生まれ(現在53歳)。韓国の「ジェネレーションX」ともいわれる“386世代”の代表的存在だ。90年代に映画監督としてのキャリアをスタートし、2000年に韓国軍と北朝鮮軍の兵士の許されざる交流を描いた名作『JSA』を発表。韓国で社会現象を巻き起こしただけでなく、日本国内でも大反響を呼んだ。

その直後に発表したのが『オールド・ボーイ』を含む、いわゆる“復讐三部作”。チャヌク監督の代表作であり、国際的な評価が非常に高いことでも知られている。ということで、この“復讐三部作”についてざっくり紹介しよう。


■『復讐者に憐れみを』(2002年)

02年に公開された“復讐三部作”の1作目。聾唖の青年リュウは腎臓病を抱える姉のために必死で働いて貯めたた手術費を臓器密売業者に騙し取られてしまい、身代金目的で億万長者ドンジンの娘を誘拐することに。しかし、自分のために弟が誘拐を働いたことを知った姉は自責の念で自殺。さらに誘拐した娘を死なせてしまったリュウは、復讐鬼と化した父・ドンジンから命を狙われることになる。

・もはや嫌がらせレベル! な残虐シーンの数々

ストーリー自体は後に続く2作よりもストレートだが、暴力描写は最も生々しく荒々しい。“主人公VSチンピラ集団”とか“被害者VS連続殺人鬼”といった分かりやすい対立の構図は一切なく、その代わりに(というわけではないが)暴力描写ひとつひとつのエグさが尋常ではないのだ。どうやら韓国映画には“強い復讐心=じわじわ痛めつける”というセオリーがあるらしく、ドンジンの処刑方法は「そういう冷静さだけはあるんだ……」とドン引きすること必至。リュウの怒りに任せた暴力はドンジンに比べればまだ可愛いものなのだが、殺される側のキャラが特殊なので若干の滑稽さがプラスされており、このあたりはチャヌク監督の性格の悪さが垣間見えて非常にグッとくる。

・本当に悪いのは誰? 怒りのやり場に困る人物設定

不幸のつるべ打ち状態のリュウは運命という言葉で片付けるにはあまりにも不憫だが、すべてを捨てて復讐を実行するドンジンの人間性を失った残虐さも理解できないわけではない。復讐の構図自体は単純なのだが、心から同情させてはくれない人物設定/描写は、まるで観る者の人間性や良心を試しているかのようだ。根っからの極悪人という人物があまり出てこないうえ、死んでほしくない人物から率先して死んでいくので、序盤以外はほとんどのシーンで気持ちが重くなるという、副作用が強すぎるクスリのような作品だ。

・チャヌク監督の異常なまでの“激痛描写”へのコダワリ

詳しい言及は避けるが、劇中の残虐シーンのキーワードを挙げるとすれば“カッター”“電気ビリビリ”“アキレス腱”“頸動脈”といったところだろうか。この時点で鳥肌モノだが、それぞれの描写が妙に丁寧なところが本当にチャヌクの性格の悪さを(略)。とはいえ、これは最も“痛い!”と感じる見せ方を知っている彼の手腕とも言えるわけで、ぜひ本格スプラッタ映画を撮っていただきたいものである。なお、グロ耐性がない人には少々キツいシーンもあるので“出血”シーン以外にも注意が必要だ。

・思わず惹き込まれる出演者たちの濃い~い演技

メインキャラはリュウとその姉、彼女のヨンミ、ドンジンとその娘だけ。しかし、どうにもバカっぽいリュウを演じるシン・ハギュンは本来のイケメンぶりが霞むほどの天然演技だし、ペ・ドゥナの可愛さと悪女ぶりのバランスはもはや至高。そしてドンジン役のソン・ガンホは……いつもどおりの迫力と暑苦しさと言えば十分スゴさが伝わるだろう。そんなキャスト陣が、衝撃かつ因果応報なラストに突き進んでいく様子は口がカラッカラになることうけ合いなので、ぜひ強い気持ちで観賞に挑んでいただきたい。ちなみに若かりしペ・ドゥナの全裸が拝める作品でもあるが、濡れ場のインフレ状態になっていることもあってかそれほど感動はないかも……。


■『オールド・ボーイ』(2003年)

『復讐者に憐れみを』に続き、2003年に公開されたのが、今回放映される『オールド・ボーイ』。「狩撫麻礼」の名で広く知られる天才原作者・土屋ガロンとハードなタッチで知られるマンガ家の嶺岸信明が生み出した傑作コミック『ルーズ戦記 オールドボーイ』を原作とした劇場作品だ。第57回カンヌ国際映画祭で、審査員のクエンティン・タランティーノから「パルム・ドール(カンヌ国際映画祭の最高賞)を授与したかった」と評されるも、結果は審査員特別グランプリ。つまり、ソッチ系のバイオレンス・アクション好きならば、絶対に観ておかなければならない傑作というわけだ。

・まさに狂気! 謎が謎を呼ぶ展開に注目

物語は、酒乱気味なサラリーマン、オ・デスが何者かに誘拐され、15年にも及ぶ監禁生活を強いられるシーンから始まる。ベッドもテレビもバスルームもある意外に居心地が悪くなさそうな監禁部屋、音楽とともに流れる麻酔ガスによって強いられる眠り、睡眠中に世話係たちによって行われる散髪や掃除、心の病へのケア。いったい誰が、何のために、この“完璧な監禁”を行っているのか? 物語が進むごとに少しずつ秘密が明かされていくものの、同時に新たな謎も提示され、やがて驚愕のラストへと繋がっていく……。

・謎めいたフレーズからストーリーの結末を予想しよう

本作『オールド・ボーイ』は数多くの謎めいた言葉に彩られている。「笑う時は世界と一緒 泣く時はお前一人」「砂粒であれ岩の塊であれ水に涼むのは同じだ」「鹿が猟師の手から抜け出すように 鳥が罠から抜け出すように 自らを救え」など、旧約聖書の引用をはじめとする意味深なフレーズが、様々な形で登場する。もちろん物語の結末や作品自体のテーマと深く関わっているので、スルーすることなく、その意味をじっくり考えつつ鑑賞してみよう。

・思わず目を背けたくなる超バイオレンスなアクションに注目

あのタランティーノ監督も激賞したというバイオレンスアクションも要注目だ。監禁中に体を鍛えまくった主人公が不良少年5人に見せつける素手ゴロや、凶器を持ったチンピラ数十人を相手に単身襲いかかるシーンは鳥肌必至。問答無用で悪人をバッタバタとなぎ倒していくアクションは爽快そのものだが、同時に死ぬほど痛そうなのが最高にリアルである。また、過激な暴力を日常生活と地続きの存在として描いているのも特徴。CDや歯ブラシなど日用品を利用した数々の暴力描写はもちろん、トンカチを握ったオ・デスの姿は妙な美しさすら湛えている。

・激シブ中年男が魅せる油ギッシュなノワール世界を堪能

本作の一番の魅力は、韓国ノワールを代表する監督の一人であるパク・チャヌクの盟友であり、同作の主演を務める国民的俳優チェ・ミンシクの“渋さ”であると言い切りたい。冒頭の警察署で泥酔する腹の出た中年サラリーマン、監禁中され発狂寸前となった姿、そしてハードボイルドな追跡者と、実に活き活きと主人公オ・デスを演じている。その姿は時にキュートであり、時に病的、そして最高にクールなのだ。薄汚れた傷だらけのオッサンが、なぜこんなにもカッコいいのか? という謎を解明するためにも、ぜひ他のミンシク出演作もチェックしてほしい。


■『親切なクムジャさん』(2005年)

『オールド・ボーイ』に続き2005年に公開された、復讐三部作の最終作。韓国の国民的女優イ・ヨンエが幼児誘拐と殺人罪の濡れ衣で13年も服役することになった美貌の女性クムジャを、そして『オールド・ボーイ』で世界的にその名を知られるようになったチェ・ミンシクがウルトラサイコな英語教師ペク・ハンサンを演じている。前2作と比較するとコミカルなシーンが多く直接的な暴力描写は控えめだが、後半には凄惨すぎる復讐シーンが待っているのでバイオレンス映画好きにもオススメできる作品だ。

・美しすぎる復讐鬼! クムジャさんの表情の変化に注目

刑務所では模範囚であり、敬虔なクリスチャンとして仲間や支援者たちに接していたため「親切なクムジャさん」と呼ばれていた主人公。服役中は聖女を思わせる清楚な風貌が印象だが、出所と同時に厚化粧の悪女にトランスフォーム。娘との再開を通じて母の顔を垣間見せるものの、復讐の時が近づくにつれて次第に鬼気迫る妖艶な美しさを発しはじめ、ラストシーンでは……。聖であり邪でもあるという二面性を抱えているクムジャさんは、一体どちらが本当の姿なのだろうか。

・クサいメシを食った者同士の絆!? 女囚パワーが炸裂

本作はクムジャさんが女子刑務所で良い人を演じたり、ライバルを追い落として手に入れたコネクションを使って真犯人にリベンジする……という物語。元北朝鮮スパイの老女、溶接工場を営む元銀行強盗、彫像アーティストら、個性豊かな元女囚たちが結束して計画を進めていく様子は猛烈にスリリング。刑務所内では天使のように優しかったクムジャさんが、出所した途端に豹変して仲間たちをアゴでコキ使いまくる様子にはちょっと引くが、その辺りも作品が持つメッセージ性と直結しているので、目を逸らさずご堪能いただきたい。

・チャヌク組が集結! イイ顔の俳優たちにも注目

過去のチャヌク作品でお馴染みの俳優たちも見逃せないポイント。ペク先生を演じる名優ミンシクはもちろん、『オールド・ボーイ』から監禁部屋のボスを演じたオ・ダルス、凄腕の警備室長として登場したキム・ビョンオクなど、いわゆるイイ顔のガイズがまったく異なるイメージのキャラクターを演じている。さらに『JSA』『復讐者~』や『渇き』(2009年)にも出演しているチャヌク作品常連のソン・ガンホ、『復讐者~』で聾唖の青年リュウ役を演じたシン・ハギュン、『オールド~』でヒロインのミドを演じたカン・ヘジョンや、姉弟を演じた“あの2人”もチョイ役で出演しているので探してみよう。


“復讐”ってどうなの? 三部作を締めくくるメッセージを体感せよ

復讐シリーズの第1作『復讐者に憐れみを』、第2作『オールド・ボーイ』において、パク・チャヌク監督は過激なタッチで復讐劇を描きつつも、“復讐”という行為そのものを肯定することは決してなかった。シリーズの締めくくりとなる本作では、そのメッセージをさらに直接的に投げかけてくる。自らの手による復讐、他者を利用して行う復讐、司法による処罰。これらの選択肢は、残された者にとって、そして先立った者にとって、一体どんな意味を持つのか? そしてクムジャさんをはじめとする登場人物たちは、どの道を選ぶのだろうか……? もちろん、観る者に「こいつ…ブッッッ殺してやりてえ!!」と思わせることが大前提ではあるのだが。

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