「パシリム」「パンズ・ラビリンス」…ガチオタ天才監督、ギレルモ・デル・トロの絶対観るべき作品5選

AbemaTVにてギレルモ・デル・トロ監督作品『パンズ・ラビリンス』が放送される。特殊メイク畑出身(そしてガチのオタク)の映画監督としては、いまや世界で最も成功している一人となったデル・トロだが、そんな彼のフィルモグラフィから、『パンズ・ラビリンス』を含めて特に観ておくべき5作品をピックアップ。併せて鑑賞すれば、ダークでファンタジック、かつホラーでポップという独特な世界観のトリコになるはずだ。


■『ミミック』(1997年)

NYで未知のウィルスを撒き散らしていたゴキブリを駆除すべく、遺伝子操作で新種の昆虫が生み出された。しかし数年後、頻発する奇妙な猟奇殺人事件を調査するため地下鉄構内に向かったヒロインの前に姿を表したのは、なんと人間に擬態する巨大な昆虫だった……!

長編デビューとなった変則型吸血映画『クロノス』(1993年)で脚光を浴びたデル・トロの、記念すべきハリウッド進出作品。昆虫パニック映画の歴史は古いが、遺伝子操作という科学的な設定によって説得力を持たせつつも、“虫が人間に擬態する”という大胆な展開で今までにないSFホラー作品へと昇華させている。

まず虫(特にゴキ)が苦手な人にはオススメできないが、デヴィッド・クローネンバーグの『ザ・フライ』(1986年)などが好きな人は迷わず観賞するべき。ロングコート姿の男性に擬態する巨大昆虫の衝撃的なビジュアルだけでも一見の価値ありだ。

ちなみに、後に同じくデル・トロ監督作『ブレイド2』に出演することになるノーマン・リーダスのデビュー作でもあるので、ファンはチラリと映る彼の姿をお見逃しなく。


■『デビルズ・バックボーン』(2001年)

1930年代末、内戦下のスペイン。戦災孤児たちを預かるサンタ・ルチア孤児院では、夜な夜な幽霊が現れるという噂があった。そこへ連れてこられた12歳のカルロスは入所するなり幻覚にや幻聴に悩まされはじめ、やがて行方不明になったという少年サンティの霊と交流することになる。しかし、それはこの孤児院に隠された秘密を掘り起こす行為でもあった……。

デル・トロの才能を見込んだスペインの巨匠、ペドロ・アルモドバルが制作を買って出た同作は、まるで『パンズ・ラビリンス』のファンタジー要素を怨霊ホラーに置き換えたかのような映像・内容だ。実際、おどろおどろしいホラー映画の体裁をとってはいるが、スペインの暗い歴史をベースに登場人物の心理を丁寧に描き、まるでゴシック絵画のような映像美で魅了する。

もちろん『パンズ・ラビリンス』で顕著だったデル・トロ印の“現実×ファンタジー”要素もたっぷり。容赦のない現実(=戦争/孤児院)、幽霊(非現実)、そして酒瓶に漬け込まれている胎児など、相対する素材を並列で描けるのも、彼の監督としての手腕あってのものだろう。

■『ヘルボーイ』(2004年)

■『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(2008年)

コミック原作者、マイク・ミニョーラとタッグを組んで制作された同シリーズは、デル・トロ作品の常連でもある怪優、ロン・パールマンをヘルボーイ役に起用するのに7年かけて制作側を説得したという執念の賜物。実際、実写版ヘルボーイはパールマン以外に演じることは不可能だったのでは? と思えるほどのハマり役(特殊メイクも最小限!)で、彼のキャリア中でも最も有名な作品のひとつになった。

04年公開の1作目では、ヘルボーイがナチスによる秘密計画によって魔界から迷い込んだ悪魔の子であることや、半魚人エイブ・サピエンの哀しい生い立ち、特異体質を持つリズの過去など、キャラクターやストーリーの基本設定が語られる。そして、世界を支配するべく再び悪しき計画を企てるのは、現代に復活した怪僧ラスプーチンだ。

同時期に公開された(『スパイダーマン』以外の)アメコミ映画が軒並み残念な結果に終わったことを考えても、世界観を損なうどころか原作以上に魅力的に仕上げてみせたうえ、大ヒットさせてしまった『ヘルボーイ』はつくづく偉大であった。

4年後に公開された続編『ゴールデン・アーミー』では、底なしの欲望で世界を蹂躙した人間たちに復讐を誓うエルフの王子ヌアダが登場。太古の最強兵器“ゴールデン・アーミー”の封印を解くべく、王族に唯一対抗しうる存在であるヘルボーイに真剣勝負を挑んでくる。

すでに1作目で基本紹介が済んでいるので、魅力的なキャラクターたちの掘り下げに重点を置いているのが最大のポイント。ヘルボーイとリズの痴話喧嘩やエイブと王女ヌアラの切なくもピュアな恋など、人間以上に人間くさい彼らのやり取りは非常に微笑ましい。中でも、ヘルボーイとエイブがビールで酔っぱらいながらバリー・マニロウの「涙色の微笑」を熱唱するシーンは、ギャグパートでありながら号泣必至の名シーンだ。

また、CGメインだった異形のモンスターたちは着ぐるみプラスCGに変更されており、生々しさが格段にアップ。おかげで80~90年代のSF映画が放っていた禍々しさに満ちていて、特に中盤の見せ場である“トロール市場”のシークエンスはVFX以前の懐かしいワクワク感が蘇ってくるので、洋画劇場世代の映画ファンは必見だ。


■『パシフィック・リム』(2013年)

太平洋の深海から出現した巨大生命体“KAIJU”から人類を救うため、世界中の技術を結集して開発された人型巨大兵器・イェーガー。しかし、この巨大ロボも出現するたびに強力になっていくKAIJUたちに苦戦を強いられていく。そこで、伝説のパイロットだったローリーと日本人研究者のモリ・マコが旧式イェーガー“ジプシー・デンジャー”を駆り、KAIJUと自身の忌まわしい記憶に対峙することになる……。

「巨大ロボ映画……!? 絶対やる!!」とデル・トロ監督が言ったかどうかは定かではないが、本作への情熱は並々ならぬものだったという。ここ数年で監督の名前を知ったファンの中は『パシ・リム』を代表作と捉えているだろうし、日本のポップカルチャーへの愛を隠さない監督だけに、TVスポットなどを見て映画館に足を運んだという人も少なくないはずだ。

本作はド直球な“ロボット映画”ではあるが、監督自身はガンダムやスパロボ系よりも『機動警察パトレイバー』からの影響が大きいと語っている(=信用できる)。設定にリアリティを追求するのではなく、巨大ロボが当たり前のものとして存在する世界の中で人間同士の絆や愛情を描き、あくまでドラマを追求する姿勢は、確かに『パト』に通じるものだ。

いま本作を見返すと、例えば関節の動きひとつにすら凝りまくっていることに改めて気付かされることだろう。しかしディテールにこだわる一方で、あえてベタなデザインや設定を採用しているのも事実。そこは、メイン機となるジプシー・デンジャーが放つ必殺技“エルボーロケット”ことを、製作段階から「ここでロケットパンチがさ……」と呼んでいたデル・トロのガチオタっぷりを知っていれば特に不思議でもないことである。


■『パンズ・ラビリンス』(2006年)

1944年、スペイン内戦で父を亡くしたオフェリアは、妊娠中の母とその再婚相手であるヴィダル大尉のもとに引き取られ、独裁政権を敷くフランコ軍の駐屯基地へ向かう。そこで様々な空想を巡らせるオフェリアだったが、冷酷な義父や残酷な現実から逃れるように森の中の不思議な迷宮へと迷い込んでいく……。

当時すでにヒットメーカーの仲間入りを果たしていたデル・トロが手がけた、スペイン産ダークファンタジーの傑作。お伽話の摩訶不思議なテイストに、エキゾチックなスパイスを効かせた映像美と瑞々しい魅力あふれるヒロイン・オフェリア、そして幻想的なシークエンスとリアルな内戦描写を交互に展開させることで独特な緊迫感を生み出し、多くの映画ファンの心を掴んだ。

ただし、スプラッタ映画ばりにエグいカットを随所に挿入してくるので、子どもが主人公のファンタジーだからと油断するのは禁物。とはいえ、ファンタジー作品をキラキラした夢物語に終始させないところも、デル・トロ監督がガチの映画好きから支持される理由のひとつであることは間違いない。

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