炎上した“吉田沙保里のポエム実況” 名実況のカリスマ・山本浩(元NHKアナ)がバッサリ

過去最多のメダル獲得など、選手の活躍に沸いたリオ五輪だが、日本時間の19日早朝に行われた女子レスリング53キロ級の決勝で、日本の吉田沙保里選手が敗れた一戦での「実況アナウンス」が物議を醸している。

実況を担当した日本テレビの河村亮アナウンサーは、試合が始まる前から、2014年3月に亡くなった吉田選手の父親のエピソードなどをこれでもかと紹介し、試合が始まってからも「お父さん」「父」を連呼。

さらに吉田選手になり切って、


「おそらく父はいま自分のことを心配しているだろう。お父さんに一番できること、私は元気です。決勝で相手を倒します」

「タックルは父から教え込まれた」

「父が一緒に戦ってくれると思う。力が二倍になると思う。そんな不思議な感覚がある」


などと、情緒に訴えるような実況アナウンスを続けた。

これに対してインターネット上では、「感情論ばっかりでうんざり。父が、父が、の連呼は萎える」「泣かせに入ってて鼻につく。スポーツ実況してくれ」「「レスリングの実況アナのポエム、どうにかならんのか・・・」などと、怒りの声も多く寄せられた。


スポーツの醍醐味を伝えるはずの実況アナウンスで、果たしてどこまで情緒的なエピソードが必要なのか。22日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では元NHKアナウンサーで、サッカーやオリンピックなどさまざまなスポーツの実況に携わってきた山本浩さんに話を聞いた。


■「ポエム」批判の実況、山本さんはどう見たか


山本さんから新人時代研修を受けたという元NHKアナウンサーでジャーナリスト、番組コメンテーターの堀潤氏によると、山本さんからの記憶に残る“教え”は、「実況は哲学を伝えることである、見えないものを伝えることが我々のしごとである」ということだったという。

その山本さんは、スポーツ実況の原則は、「選手が自分で語ること」だという。あくまでも実況は、選手の“主張”が見ている人にわからない(と思われる)ときに、言葉で補うもの。今回の河村アナの実況は、「それを大きく変えた、新しい流派」であり、「まったく実況ではないと思います」とした。


何らか台本があるのかという質問には、「ないと思う」との見解。そもそも山本さんによると、事前に取材はするが、それは「一旦捨てる」。何故かというと、現場で選手が“喋って”くれるから。「昨日彼女がこう言っていましたというのはもう古い話」であり、つまり吉田選手の(父との)話などは「実況」ではなくなってしまったという。


■実況で大切なのは、「伝えたい相手」は誰なのかということ


山本さんは、「一番大事なのは、お客さんが誰かということ」。これにはいろんな考え方があり、例えばスポンサー、上司、仲間などがあり得るが、視聴者に届けたい場合、堀氏は「独りよがりだったと思いますね。実況じゃなくて、物語を伝えたいだけです」と、実況を担当したアナの想いと視聴者との間に距離があったことは否めないのではないか、という見解を示した。

もちろん、実況アナウンサーにも感情が入ることがある。ただし山本さんによると、それは、見ている人が共感出来る内容であれば、気にならないが、全く関係ないことが話されているとうるさく感じるものだという。


■“ポエム”エピソード、試合後なら炎上しなかった?


番組キャスターの小松靖アナウンサーは、河村アナが実況をしていないわけではなかったことに言及。ただ、最終的にはそのポエム的な印象が強く残ったことを挙げると、山本さんは、「終わったあとに(そういう話を)すると、すごく高い点になったのではないかと思うんです」と指摘。試合前にそういう話をしたことについて、「(通常のやり方を)逆転させることを試みたんだと思うんですけど、多くの視聴者がついてこれなかったのではないかと思うんです」と話した。そして、


「今、(試合後などに、すぐ)スローモーションが放送されるために、今のアナウンサーは重心を過去におくようになった。昔のアナウンサーはスローが出ないために、未来の話をどんどんする。河村アナウンサーも、スローでは自分が言いたいことを乗せられないために、前に言ったんじゃないかと思う」

と持論を展開。ただしあくまでも実況内容は「選手が言わせる」ものであり、「その言葉が聞こえる人が、(名実況を)残せる。(言う内容を)計算しているうちはあまり印象に残る実況にはならない」とコメントした。


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