AKLO、インタビュー 「正解ばっかの世の中で、正解を歌っても超つまんない」

AKLOが最新アルバム『Outside the Frame』を発表した。通算3枚目のフルアルバムとなる本作は、トレードマークとも言えるセルフボーストにユーモアと知性をミックスさせた傑作だ。本作で歌われるのは、インターネットが高度に発達した現代社会での生き方。日本でいち早くインターネットでの活動に注目し、それを実践することここまで勝ち上がってきた彼が、現在のインターネットを取り巻く状況をどう見ているのかを聞いた。


■ポジティヴに生きるにはトリックが必要

ーー『Outside the Frame』は収録曲がそれぞれ別個の世界観を持っていますが、最終的に「We Go On」と「3D Print Your Mind」のメッセージにつながるように作られていると思いました。

「Your Party」もですね。最後の3曲は結構重いメッセージのある曲です。俺はもともとボースティングスタイルでラップしてたんだけど、今回初めてそういう曲を書いたんですよ。でもウエットすぎたり、シリアスすぎるのは嫌だから、そうならないように曲単位でもアルバム単位でもバランスをすごく意識しました。


ーー曲単位でいうと「McLaren」のバランスは絶妙ですね。

「McLaren」が「捲られん」かい!っていう(笑)。街を歩きながら下らないギャグを思いつくとすごいうれしくなるんです。そういうユーモアとヒップホップ的なボースティングを自分のバランス感で混ぜることで、曲として成立させています。


ーーアルバム単位では具体的にどうやってバランスをとったんですか?

「Sometimes」がまさに全体の調整役みたいな曲なんです。レコーディングの終盤に収録することが決まっていた曲を並べて俯瞰すると、なんだかしっくりこない。個々の楽曲はいいのに、全体としては重すぎるというか。だから、俺自身の隙をユーモアたっぷりで見せている「Sometimes」を作って、この場所に配置することにしました。時にはラブで時にはヘイト、時にはハイで時にはロウ……、そんな俺ですけど、みたいな。


ーー「Sometimes」はAKLOくん自身の多面性を歌いつつ、インターネットが可視化した価値観の多様性を歌っているように思ったんですが。

基本的には俺個人の歌ですが、「どう表現すれば俺なりのバランス感覚になるか?」ということを本当にいろいろと考えたので、そう聴こえたのかもしれないですね。特に「But I Will Always Take It Easy Take It Easy」ってフックに関しては全然決まらなくて何日も悩みました。


ーーなぜそんなに決められなかったんですか?

一番最後に作ったというのがありますね。すでアルバムの全体像が見えていたので、最後のピースを埋めるような感覚でした。ラインで「Sometimes Sometimes」と歌っているから、その対比で「But I Will Always〜」という言葉は入れたかった。じゃあ何にするか? すっごく悩んだ結果、「Take It Easy」に行き着いた。「矛盾のある多面的な自分ですら気楽に考えてる」って。それが一番ハッピーに思えたんですよ。


ーーどういうことですか?

例えば「食いたいジャンク 閉まったままの玄米ライス ホップステップ マックにジャンプ」って言ってんのに、次のヴァースでは「選ぶぜオーガニック」とか正反対のこと言ってる。そういう自分の中の矛盾について真剣に考えていくと凹んじゃうでしょ? 俺はそれすらも気楽に考えちゃえよ、人間ってそういうもんじゃない?って。


ーーAKLOくんはこれまで「強くあれ」というメッセージを歌ってきたけど、今回はあえて弱さも歌うことで、その考え方をより普遍的な形で伝えることができていると思います。

今回のアルバムを作っていて、ポジティヴィティとネガティヴィティに関する本質が見えてきた気がして。ポジティヴに生きるには、なにかしらのライフハックというか、トリックが必要なんですよ。


ーーそのトリックはアルバムの各所でパンチラインになってますね。

そこが伝わってくれてればうれしいですね。


■明らかに間違っているけどすっきりする

ーーアルバムのテーマが見えてきたのはいつ頃ですか?

「Outside the Frame」を書いた時です。この曲は俺が実生活で「世界に70億人もいるんだから、お前なんかに嫌われてもいい」と思ったことがきっかけに書きました。この曲が完成した時すごいすっきりしたんですけど、日に日に自分が間違っていること言ってるなと感じるようになってきたんです。


ーーなんでですか?

ちょうど日本でも憲法改正について議論されている時期だったし、今も世界的にはピースをみんなが求めているところがあるじゃないですか。ヘイトすることが間違っているというか。そんな中で「一生敵でもいい」とか、明らかに俺間違ってるなって(笑)。でも俺にとってはその感覚がうれしかったんですよね。


ーーどういうことでしょう?

今の世の中って、スマホで調べればソッコーで正解が手に入るじゃないですか。そのせいかわかんないけど、間違ったことしたり言ったりとすごい叩かれたりして。でもそんな正解ばっかの世の中で、正解を歌っても超つまんない。明らかに間違ったことを歌ってるのにすっきりしちゃう感じが、俺の中で新しかったんですよね。


ーー「Outside the Frame」の「この70億以上の人も居る地球上のたった何人かにDisちゃったぐらいでDon’t Give a F About It」というラインはすごく爽快でしたね。やっぱり人と違うことは怖いし、それで嫌われたくないし。

俺はハーフだから生まれた時から誰とも一緒じゃないっていう感覚があって。普通に生きててどこに行ってもフィットしない感がハンパじゃないんですよ。そもそも自分にとっての国民性とかもよくわかんないし。だからもはや違うということにあまり恐怖は感じないです。「違っててもいいでしょ」と思う。そういうフィットしない感じって、みんなも普通に感じてると思うんですよ。俺が会社勤めしてた時も、ちょっと人と違う動きをする個性的な人が「あの人、変だよね」みたいな陰口を言われたりしたし。でも俺からしたら、そういうのも「どうでもよくない?」って感じでした。


■クリエイティブにはポジティヴィティが必要

ーーアルバムの重要なメッセージを担う「We Go On」と「3D Print Your Mind」は、まさに違うことを恐れるのではなく受け入れて前に進むことを歌った曲ですね。

「Sometimes」の話じゃないけど、正解が簡単に手に入るから、みんな間違うことを恐れて細かいことを気にしすぎなんですよ。細かいことを気にしてると遠慮がちになっちゃう。俺は物を作る仕事をしているから特に思うんだけど、自分を受け止めて、しかもポジティヴでいるっていうのは超重要なことなんですよ。自分を受け止めて、ポジティヴに吐き出すっていう。


ーーこの2曲は才能があるのに行動できないクリエイターのために書いたんですよね?

そうですね。俺は職業柄、まだ日の目を浴びてないけどすごい才能を持ったクリエイターといっぱい出会えるんです。でもこういうインターネットが発達した時代に何かを発表したりするとすぐにいろんなこと言われるから、みんな萎縮してしいがちなんですね。すぐに落ち込んじゃったりとか。なんかそういうのってもったいないと思う。俺はラッパーだし、さっき言ったライフハックもいろいろ知ってるから、落ち込みかけても比較的すぐに良いコンディションに戻ることができる。「そんなん気にしねえよ」って。


ーー時代の波にのまれてくすぶっている才能を見逃せなかったんですね。

才能ある人が時代のせいで埋もれてしまうのって超残念だと思うんです。やっぱりクリエイティブにはポジティヴィティが必要なんです。だからそういう人のポジティヴィティをプッシュする作品を作りたかった。あと長年制作続けていくなかですごく実感したことなんですが、メッセージを発する時は不特定多数の誰かじゃなくて、あえてパーソナルな関係性の人に向けて書いたほうが結局多くの人に伝わるんですよ。


■インターネット使わなくても生きていける

ーー「Your Party」ではインターネットのことを歌っているけど、ミックステープのフリーダウンロードから成り上がってきたAKLOくんは今の状況をどんな風に見てるんですか?

うーん、なんか下らない会話しか盛り上がってない感じがしますね。


ーーみんな炎上して「祭り」になるのを待ってるところはありますよね。

本当にそう思う。なんかインターネットのお菓子化というか。身にならないことばっかりなんですよ。ちゃんと栄養あるもの食べてる?って聞きたくなりますよ。しかも最近ネットの記事って、いろんなバナーやサジェストばっかりですごく気が散るんですよ。そのせいか全然長い記事を読む気にならないし、「ここが歌詞になりそうだな」って感じることがほとんどないんですよ、ネットでは。それって単純に自分の心に響いてないんだろうなって。


ーー最近インターネットをほとんどしないんだよね?

そうですね。本と増えました。Kindleとかじゃなくて紙の本。


ーーこうして話を聞いていると、AKLOくんは知的でセンスがいい。ラップはうまいし、話も面白い。だけど今の日本ではAKLOくんのように洗練された人は理解され難いと思うんです。自分ではどう感じていますか?

そうなんですか?(笑) 確かにそういう世の中を窮屈に感じることはあります。やっぱりインターネットを見てると、「意見が合わないな」「なんだかな」って思うことが多かったし。そうすると徐々にネットを見なくなってきて、ネットを見ないとパソコンを使う必要がなくなってくるんですよ。パソコンなんてネットがつながってなかったら、全然面白くないし。そんなわけで今回はリリックをすべてノートに手書きしてるんです。


ーーあえてアナログに。

フィーチャリングの仕事が来ても、電話でテーマを聞いて、ペンとノートがあれば仕事が完結するという。それで気づいたんですよ。「ああ俺、究極インターネット使わなくても生きていける」って。それがすごい安心感で。ノートが窮屈な場所から離れていられる逃げ場になったんです。


ーー世の中には脳みその中にまでネットを入れようなんていう話もありますけどね(笑)。

なんかよくわかんないですよね。でもそれすらも気楽に考えればいいかなって。今はこんなふうに感じてるだけであって、インターネットはどうせまた面白くなるんでしょって期待もあるしね。ただ今のタイミングでペンとノートと音楽が俺の悩みを解決してくれたのはすごくありがたかったですね。

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