劇場版『アンパンマン』最新作監督インタビュー 子どもたちへ伝えるメッセージとは?

7月2日(土)から公開されている『それいけ!アンパンマン おもちゃの星のナンダとルンダ』。やなせたかし先生が残した楽曲「勇気のルンダ」をモチーフに制作され、おもちゃの星のお姫様・ルンダといつも一緒にいるロボット・ナンダが、落としてしまったおもちゃスティックを取り戻すというストーリーだ。


AbemaTIMESは、本作を手がけたベテランアニメ監督・川越淳に取材。やなせイズムをいかにして継承しているかなどの制作秘話、そして子どもたちへのメッセージを伺った。

――本作が「勇気のルンダ」という楽曲をもとに作られた経緯をお聞かせください。


川越:本作から併映される短編がなくなったこともあり、音楽ものの要素を持ったお話を考えていたんです。そこから「勇気のルンダ」っていう歌をもとにして、ルンダとナンダっていうキャラクターを作ってやってみようかなと。脚本の米村正二さんが書いたストーリー案に僕が絵をつけて、打ち合わせを進めていきました。やなせ先生がもうおられないので、キャラクターデザインの前田実さんにも、こんなロボットで女の子で、みたいな設定をお話しして作り込んでいきました。


――ロボットのナンダは、機関車に変形したりしますが、そのアイデアも初期の段階からあったのですか?


川越:そうですね。変形はシナリオ段階からありましたが、こういうポンコツロボットは何を描いてもどっかでみたことがあるんですよ(笑) 前田さんも何度もいろんな絵を描いてくださって、結局これができたのですが、かなり苦労しました。どういう風に変形させるかは、コンテ描いているときに考えました。ぼくロボットものが多かったので(笑)


――おもちゃではあるんですけど、クライマックスのアクションにはロボットアニメ要素がありましたね。


川越:ああそうですか(笑)僕は『アンパンマン』で演出家になったので、シリーズの監督の永丘昭典さんが作ったラインの延長で演出をしています。その基本ラインからロボットものも作っています。それがまたこっちに戻ってきただけで、ロボットものをやるときの演出スタイルも、実は『アンパンマン』が基本なんです。


――ロボットものといえば、本作には山下将仁さんも参加されていますよね。


※編集部注:山下将仁は『鉄人28号[新]』や『うる星やつら』などで手腕を振るったスーパーアニメーター。


川越:ああ、山下さん。映画っていうのはテレビとは違って、普段劇場作品をやっているような人たちがやってくるので、演出チェックするのがすごく楽しかったです。本当にスキルの高い人が集まっているので。


――ちなみに、山下さんはどのパートをご担当されたのですか?


川越:機関車の変形、ドリルから機関車に変形していくところですね。先日、久々に会って、担当部分をタブレットで見てもらったんですが、うまくいってよかったと言ってました。本作では、ロボ師と呼ばれるアニメーターたちに結集してもらいましたが、普通の生活のシーンも長編映画を手がける方が丁寧に作ってくれていて、そこも重要なところですね。

――先生がお亡くなりになったあと、どのようにやなせイズムを継承して作品を作られていますか?


川越:先生は戦争体験者で、ひもじい時代とか人間のひどいところとかをいっぱい見てきた方なので、考え方が甘くないんですよね。その中で唯一残されたのがやさしさとか、そういうものなんだなと僕らは理解して、それをベースにしてちゃんとやっていこうと。


――スタッフの皆さんがしっかり理解しているんですね。


川越:これまでは先生のアイデアをベースにして作ってきましたが、アニメスタッフのアイデアに先生が触発された部分もあります。併映作品の短編は、先生のアイデアなしで作ったものもあるので、やなせイズムを守りながら新しいものを作っていけるんじゃないかなと、僕自身は思っています。


――本作は子どもたちの初めての映画体験となるように作られているということですが、制作するうえで気をつけていたところはありますか?


川越:子どもたちに飽きないで見てもらえるように、明るい作品を目指して作りました。子どもたちが好むパステルな色をメインに使って、怖くないように暗い場面をなるべくなくした作りにしています。あとはルンダとナンダの位置関係が、だんだん友だちになってっていく心の変化を、うまく子どもにもわかりやすいように作ろうと。

――「アンパンマンのマーチ」の歌詞には、「なんのために生まれてなにをして生きるのか」という普遍的な問いがありますよね。


川越:この歌ってすごいですよね。最初に聞いたときにすごい詞だなぁって思って。本当にやなせ先生の生きざまの中からしぼり出た言葉なんだなと。


――応援される、勇気をもらえる歌詞ですよね。


川越:震災のときに曲を聴いて、本当にわかるなあって思いました。たぶん子どもたちも小さいころには何にも頭に入らず聞いていたと思うんですけど、あの詞を改めて聴き直すとこんなにすごいことを歌っていたんだという。


――本作で初めて劇場で映画を体験する子どもたちがたくさんいると思います。将来アニメを創りたい、自分も『アンパンマン』を仕事にしたいと思う子どもたちに向けて、監督からメッセージを頂けますか。


川越:僕も小さいころに東映の『ガリバーの宇宙旅行』とか『長靴をはいた猫』とかを見て育ちました。そのあと船乗りになろうかなとか横道にそれたけれども、やっぱりアニメに戻ってきたんで、本当にやりたいと思ったら、ぜひやってみてください。ただ、つらいです(笑)それでも地道にやっていけば、何とか普通に食べられるくらいの生活にはなれるものなんですよ。あきらめずにやればなんとかなるかなって思います。


――突出した才能がないとダメなんじゃないか、みたいに思う人もいますよね。


川越:トップに立つには、突出した才能がいるんでしょうね。ただ、普通にちゃんと仕事に真面目に向き合って、きっちりとやれば普通の生活ができると思うんです。食べられないって言っている人たちは、どっか違うのかなって僕は思いますね。


――ネガティブなイメージがアニメ業界にはありますが、決してそんなわけではないんですね。


川越:そんなにね、ひどくはないと思うんです。自分に甘くてさぼっちゃう人が多いから。


――しっかり真面目にコツコツやってれば、大変なだけの業界では決してない。


川越:いや、こんな楽な業界はないと(笑) でもやっぱり修業時代は厳しかったですよ。アニメーターの師匠が厳しい人で、かなり勉強させてもらいました。そこでやめちゃう人も多かったですが、やっぱりちゃんとやればなんとかなる世界なので、本当にやりたいと思うんだったら、ぜひいらしてください。


――ありがとうございました。


『それいけ!アンパンマン おもちゃの星のナンダとルンダ』

7月2日(土)より元気100倍ロードショー中

(c)やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV

(c)やなせたかし/アンパンマン製作委員会2016

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